ゴミのこと

ikami2005-05-04


朝、家の前の道を歩いていると、粗大ゴミが捨ててあった。
 
そのゴミの中でひときわ異彩を放っている物体。
それは、往年の名機、PC-8801mkIIだった。
それも一台ではない。model30が三台にmodel10が一台で、
4台が積み重ねて置かれていた。
 
PC-8801mkIIというと、今から12年くらい前のパソコンだ。
12年前の僕なら、喉から手が出るほど欲しかったパソコンである。
でも、今ではこのマシンは、現行のマシンと比べて一万分の一くらいの
スピードしかない(多分)。これで一体どうしろというのか。
 
でも、ちょっと欲しいかなって気もする。これくらい古いマシンとなると、
もはやアンティークだ。実に不格好でごっついマシンで、ホントに分かる人にしか分から い逸品であるけれども。
しかし、しこたま雨の降った後のゴミに手を出せるほど
僕は街のゴミ収集家ではなかった。
 
ゴミ収集家と言えば、こんな人がいたな。
 
その人は3年ほど前に、アンプを売ってくれた人だ。一緒にPC-8801FHと、PC-9801F2と、FP-1100と、LDプレーヤーと、βデッキと、CDプレーヤーを付けて、五千円で。
...と聞くと、なんて気前のいい人なんだ、と思うかもしれないが、これには理由がある。βデッキは壊れている。CDプレーヤーも電源の入れ方が分からない。LDプレーヤーは時々動かない。他のパソコンも、ある意味ゴミだ。
FP-1100なんて、一体どうやって使うんだ。98もフロッピーは2DDだし。
 
最初はアンプだけ買うつもりで初対面のその人の家に行った。住所を聞いて。
家に行ってみると、そこにはうずたかく積まれたガラクタの山があった。
「どこからこんなに持ってくるんですか?」と聞くと、
「いや、拾ってくるんですよ。ゴミ捨て場から」
僕は嫌な予感がした。ひょっとして僕の買うアンプも...
結局この嫌な予感は的中して、このアンプは半年ほどでお釈迦になった。
 
「へえ、この88FH、ブラックモデルじゃないですか。珍しいですね」
「ああ、それは動くのを確認してるから、持っていっていいよ」
僕にとってPC-8801FHは価値のあるものだった。なぜなら、PC-8801には、たくさんの古き良きゲームがあるからだ。これについては色々語りたいのだが、今は関係ないので省略する。
 
その人は他にも処分したいものがいっぱいあるらしくて、たくさんのガラクタを僕に託した。それがさっき書いた品々だ。なにしろ、東京では粗大ゴミを処分するのにも一苦労だから。僕は、動けばラッキー、動かなかったら捨てちゃえ、と思って、すべて引き取った。僕にとっては、サラウンドアンプとPC-8801FHが5千円で手に入るだけで嬉しかったのだ。
 
そのガラクタ達の、その後について。
 
CDプレーヤーは、友人の手に渡った。その後どうなったかは知らない。
LDプレーヤーとβデッキは、別の友人が引き取って、修理して使っているそうだ。今も元気に動いているのだろうか?
PC-9801F2は、藤沢にいた知り合いの人と、PC-286Vとの交換という形で引き取られていった。あれの筐体にAT互換機を入れるそうだ。
結局その試みはうまくいったのだろうか?その人は今九州に帰ってしまったので、わからない。
FP-1100は、2〜3度デジタルディスプレイに繋がれて、動作確認をした。ちゃんと動作していた。ポケコンのようなベーシックが入っていた。その後、某大学のサークル会館の裏で、壮絶な最後を遂げた。酔っ払い数人(僕も含む)にムチャクチャに叩きのめされ、無残な形で捨てられていった。
アンプは、半年くらいで電源の調子がおかしくなって、一旦彼に修理の依頼をした。が、結局復活せずに、そのままである。
 
最後に残ったのは、PC-8801FH。ブラックモデル。
現行のマシンと比べて表示できる色が遥かに少なく、鬼のように遅い、今では手に入れることも難しい5インチ2Dを使っている、そんな骨董品のようなマシンがいったい今、どうしているかと言うと...
 
実はまだ、僕の部屋に置いてあるのです。
 
 (1998年2月27日の日記より)